IBEC 建築省エネ機構(一般財団法人 建築環境・省エネルギー機構)

建築環境・省エネルギー機構理事長賞第9回サステナブル住宅賞

「SDGs博士の家」

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建築主 個人
設計者 川島範久建築設計事務所 川島 範久
施工者 株式会社 DoubleBox
建設地 東京都世田谷区
構造 戸建・木造
階数 2F
延床面積 118m2

講評

 住まい手は大学教員夫妻と子どもの家族で、環境政策の研究に取り組む博士からの依頼はSDGsをコンセプトとした設計であった。閑静な南傾斜の住宅地で、南北方向にやや長い東南の角地という、コンパクトながらも恵まれた立地に建つ木造住宅である。設備はもちろんのこと、建築におけるサステナビリティも重視され、材料のトレーサビリティ(追跡可能性)についても可能な限り配慮するために、木材も来歴のわかる三重県の会社から取り寄せられた。
 配置及び平面計画は、敷地の東から西に向かって平行に置かれた3つのボリュームで構成されている。主要な居住空間のある吹き抜けを持つボリュームは、天空率を採用することで従来の斜線制限を超える高さの建築が可能となり、吹き抜け上部の高窓より敷地前の南斜面を上ってくる風を、前方の住宅に遮られることなく取り込んでいる。同時に、この高窓は自然採光を受け入れ、快適な日射をも受容する。吹き抜けは1、2階とも大型ガラス開口となっているが、サッシは防火認定付きの木製サッシが使用され、高窓は電動外付けブラインドの設置により夏季における南窓内表面温度の上昇を抑制している。内部の居住空間は間仕切り壁を最小限とすることで視線が抜け、吹き抜けとともに開放的な住空間である。
 敷地の西側に向けて建物高さが押さえられているのは、西側隣地に対する日照への配慮でもあるそうだが、建物ボリュームの高低差を利用して屋根面に降った雨は、屋外西側に設置された150 ℓの雨水タンクに集水され、日ごろの植栽への散水や、非常時のトイレ洗浄に利用される。太陽電池4.5kWと家庭用燃料電池コジェネレーションシステム0.7kWが日常の家電製品のエネルギーをサポートする。
 断熱性・気密性については、サッシ及び基礎周りの充填断熱とフェノールフォーム外張り断熱とし、内張り断熱を省略する仕様でも充分な性能が確保されている(UA値0.32W/( m2K)、C値0.1 c cm2/ m2)。空調設備は、1階の温水床暖房と、エアコンが家全体に3台(1、2 階にそれぞれ1台ずつと、寝室に1台)設置されているが、冬季はエアコン不使用で成り立っている。
 内壁の塗装はソイルペイント、フローリング及び階段の段板はFSC認証材、玄関及び外部アプローチの床はリサイクルタイルを選定するなど、設備のみならず、仕上材においてもサステナビリティへの配慮が徹底された住宅である。意匠性の高い住空間とともに設計に組み込まれたアクティブ型、パッシブ型の充分な設えが、今後においても高い意識を持つ住まい手の生活を支持する建築であることが高く評価された。

 

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