ベターリビング理事長賞第9回サステナブル住宅賞
「ライオンズ芦屋グランフォート」
建築主 | 株式会社大京 |
設計者 | 浅井謙建築研究所株式会社 |
施工者 | 佐藤工業株式会社 大阪支店 |
建設地 | 兵庫県芦屋市 |
構造 | 集合・RC造 |
階数 | 5F |
延床面積 | 8080m2 |
講評
対象作品は、兵庫県芦屋市に立地する地上5階建て79戸の分譲マンションであるが、地の利を活かし六甲山からの風を取り込むパッシブデザインの採用で電気代を約2割節減できると謳っている。また、建坪率40%(法定60%)・容積率150%(同200%)と余裕を持たせた建築計画、並びに、建物周囲に巡らせた遊歩道や緩衝帯の植栽計画が、地域の自然景観と調和し、結果としてCASBEEのSランク・ライフサイクルCO2☆☆☆☆の評価取得に結実している。この豊富な緑を共有する入居者には「環境教育プログラム」を用意し、コミュニティ育成を図っている。
ハード面の省エネルギー対策として、寒冷地向け高性能ガラスのサッシ採用等で建物外皮はHEAT20 G2グレードUA値0.46 W/(m2K)の性能を確保し、これに屋上の太陽光パネルと発電・蓄電設備を組み合わせた「創蓄エネルギーシステム」を構築・装備しているのが特長となっている。太陽光パネルは共用部(16.41kw)のみならず各住戸(2.34~3.51kw)にも割り振られ、それぞれ家庭用燃料電池コージェネレーション及び家庭用据置型リチウムイオン蓄電池とセットになって、各住戸が自らエネルギーを需給し得るシステムが構成されており、ここまでZEH志向の集合住宅は他に見られない水準に達するものと評価した。
建物規模を抑えた欲張らない建築計画に加え、各住戸への高度なエネルギー需給設備の導入は、分譲価格に相当程度跳ね返ると思われるが、入居後の居住者アンケート調査結果も概ね満足度が高く、今のところ初期投資に見合うメリットは感じられていると推察される。今後は、緑を通じた入居者のコミュニティが、このマンションの維持管理を高度な設備機器のメンテナンスも含め一緒に考え運営できる「共同体」にまで発展・成熟していくよう期待している。