硝子繊維協会会長賞第9回サステナブル住宅賞
「焼杉と土壁漆喰の家」
建築主 | 個人 |
設計者 | ArchiAtelierMA株式会社 丸山晃寿 |
施工者 | 株式会社こもだ建総 |
建設地 | 埼玉県さいたま市 |
構造 | 戸建・木造 |
階数 | 2F |
延床面積 | 108m2 |
講評
家中どこでも温度差のない、エアコン1台で快適に過ごせる屋内環境を希望する5人家族のための戸建て住宅として、ほぼ南向きの日当たりの良い敷地に建ち、南面の大開口窓を設けつつも、断熱性能を高め、パッシブデザインを巧みに組み合わせるなど、シミュレーションソフトを活用し緻密に計算されたサステナブル住宅である。
南面の大きな開口は、冬季の日射取得による暖房負荷を軽減するが、夏の冷房負荷を高めてしまうという相反する課題を、夏季の外付けブラインドを活用することで解決を図っている。この冷暖房負荷の検討にあたり、一般の設計者が使えるエネルギーシミュレーションソフトを活用し、冷暖房負荷、断熱、気密のパッシブデザイン手法を定量的に検証することにより、断熱の種類や窓配置、ガラス性能を計算して最適解を見出し、高い省エネ性能を確保している。さらに、高い断熱性能に加え、熱交換換気システムとアメニティーエアコンを利用した全館空調システムを採用して、家中どこでも温度差の少ない計画となっている。また、木製窓枠にはウッドファイバーとアルミクラッド枠を採用し、熱貫流率を抑え、結露にも強いものとするなど、細かい配慮がされている。
吹抜けを介して部屋どうしがつながり、気候の良いときには風の道をつくるとともに、吹抜け窓はブラインドを閉じた際の日射取得を補い、空間的な快適さと環境性能を両立している。外壁は耐久性を高めた焼杉と杉無垢板、内壁と天井には土壁や漆喰を使うなど、自然素材を積極的に採用し、環境負荷の軽減に貢献するとともに、外観は落ち着いた雰囲気をつくり、内観は自然素材の活用により居心地の良い空間となっている。プランはシンプルかつコンパクトにまとめ、吹抜けや視線の抜けを介して家族の気配を感じられ、自然素材の採用も相まって、家族の団らんが目に浮かぶ、あたたかい空間となっている。
住み手の感想も、夏は涼しく冬は暖かく感じ、自然素材の心地よさも実感しているとのことであり、住み心地と環境性能を高い次元で両立させた作品である。