IBEC 建築省エネ機構(一般財団法人 建築環境・省エネルギー機構)

国土交通大臣賞第1回SDGs住宅賞

「明野の高床」

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建築主 個人
設計者 能作文徳
施工者 株式会社小澤建築工房
建設地 山梨県北杜市
構造 木造軸組工法
階数 地上1階
延床面積 76.86㎡

講評

 都心で働く施主の要望は、先祖から受け継いだ山梨県の敷地に、富士山が望めて生態系に配慮した住宅を建てることであった。「実家の隣でテレワークが可能で、最終的に土に返るオフグリッド住宅」というコンセプトで計画が進められた。敷地は南側に富士山、西側に南アルプス山脈を望む傾斜地であり、居間から富士山が見えるように高床が提案された。コンクリートを使わず、リサイクルできる12mm厚の鉄板で独立基礎を構成し地面に対するフットプリントを最小とする工夫がされている。床を持ち上げたことで床下の通気性が上がり、シロアリ被害の軽減にも寄与している。
 東西方向に長い木造平屋の南面に、間口いっぱいの奥行き1.8mの濡れ縁が設けられている。大開口にはLow-E複層ガラスの木製サッシと障子を組み合わせ、断熱性を確保している。太陽光パネルを載せられるように南傾斜の片流れの大屋根とし、張り出した軒により夏季の直達日射が遮蔽されようになっている。
 外壁の断熱材として、350mm厚のワラをブロック状に整形したストローベイルを木造フレーム内に隙間なく充填し、外壁側は焼き杉、室内側は土壁仕上げとしている。施主や友人が土塗り作業に積極的に参加することで、手入れの手間も愛着につながっている。ワラの表面に土を固定させるために想定より分厚い土壁となったが、熱容量を高める効果につながっている。冷暖房は両端の居室にある2台のエアコンと居間のペレットストーブで行い、再生可能エネルギーとバイオマスでの運用を可能としている。
 太陽光パネルと蓄電池、コンポストトイレは現段階では設置されておらず、オフグリッドは達成できていない。しかし、生分解する建築として徹底されており、古くからの町並みにも違和感なく溶け込んでいる。省エネルギーを突き詰めた住宅ではないものの、住み心地の良さを確保した上で自然に循環する現代住宅の一つの形を示しており、国土交通大臣賞に値する作品と評価する。

 

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