ベターリビング理事長賞第1回SDGs住宅賞
「築59年の葉山の家」
建築主 | 桑原誠二 |
設計者 | 桑原誠二 |
施工者 | 株式会社TIC HOME |
建設地 | 神奈川県三浦郡葉山町 |
構造 | 木造軸組工法 |
階数 | 地上2階 |
延床面積 | 77.71m2 |
講評
建築物のエネルギー消費性能の向上等に関する法律の改正に伴い、令和7年度から全ての建築物の新築、増改築に対する省エネ基準適合義務化が行われるなど、近年環境等に関連する要求や取り組みが益々大きくなる時代を迎えようとしている。本住宅は、そのような状況の中、今後大きな問題として残されるであろう、築古既存住宅の改修という課題に対する一つの意欲的な取り組み例となっている。
「葉山の家」は風光明媚で知られる神奈川県三浦郡葉山に建設された、新耐震基準への改正時期を大きく遡る昭和39年に新築され、その後昭和47年に増築が行われた住宅となっている。そのため、現在の住宅と比較し性能が足りていないと考えられる耐震性や断熱、省エネ性能などを含めた各種性能について、現況検査を踏まえた「見える化」を行い、改修により到達する設計(性能)目標を定めて実施することにより、一般的な新築住宅と比較しても遜色のない性能レベルを達成している。
本住宅では、上記性能を確保した上、葉山の風景に溶け込んだ築古住宅をアンティーク家具に例え、世代ごとに新築へと建て替えるのではなく、時を経るごとに価値を増す資産となるような配慮を行っている。これらの取組を行うことにより、SDGS目標11「住み続けられるまちづくりを」、SDGS目標12「つくる責任つかう責任」などの複数のSDGS目標の達成に資することを目指している。
冒頭記載したとおり、膨大なストックが存在する既存住宅について、今後どのように時代のニーズに応じた性能を確保させ、持続可能な社会を実現していくかは、大きな課題となっていくものと考えられる。様々な状況や事情を抱える既存住宅について、その状況等に応じた住宅改修の標準化手法が確立され、安易な解体、新築以外の住み続けられる住宅という選択肢が広がることが期待される。