板硝子協会会長賞第1回SDGs住宅賞
「LOAM」
建築主 | 個人 |
設計者 | ASEI建築設計事務所 |
施工者 | 有限会社エスエス |
建設地 | 東京都世田谷区 |
構造 | 木造軸組工法 |
階数 | 地上2階 |
延床面積 | 193.88m2 |
講評
「LOAM」は東京・世田谷の住宅街に建つ二世帯住宅である。この住宅の内外には、関東で建設する際に必ず発生する土=関東ロームを配合したブロックや左官が使用されている。ブロックは、焼成ではなく加圧成型することで、製造時のエネルギー消費を抑え、人の手で運べる程度のサイズにして施工性も高めている。ブロックを分散的に吊ることでつくられたスクリーンは密集住宅地における新たな外観の在り方を示しており、内外共通で床に使用されている平板ブロックは質感が良く、外部での耐久性の課題はまだ残るものの、普及性を感じるものだった。一方、雨水対策や日射制御と土の関係性を考えれば、軒の出等の検討が重要になってくるはずだが、軒の出のないボックスの組み合わせによる造形となっている点には少々疑問が残った。本来であれば、身近な未利用資源を利活用しようとすることが、建築の新たな在り方を要求し、それが住まい手の暮らしにも影響を与えていくはずだ。
設計者は、これまでも鹿児島のシラスを活用した建材開発と活用実践を行うなど、地域の未利用資源を活用する実証実験を継続してきた。今回は、それまでの知見を活かし、関東ロームを用いたブロックなどの建材開発を行い、それを民間の実物件で実装するところまで持っていった、という点を特に高く評価したい。ブロックを製造するための加圧成型機を持つ企業が関東になく、関東外に土を搬出しなければならなかったそうである。また、外部に使用する際にはセメントや樹脂を混合しているとのことで、その後の循環利用は難しくなっているはずだ。しかし、今回のような実践を通して、未利用資源を循環利用していく際の課題をひとつずつ明らかにしていくことこそが重要だろう。このような試みは、カーボンニュートラルの実現に向けて、運用時だけでなく建材調達・施工~解体・廃棄までも含めたエンボディド・カーボンを削減することが強く求められるようになってきた昨今、ますます重要になってくるものであり、建設業界全体で継続的に取り組んでいくべきものだ。このような取り組みを先導するプロジェクトとして、本作品を高く評価する。